「自由な子どもに育ってほしい」という教育理念で運営されている「きのくに子どもの村学園」。
自己決定や個性を尊重し、体験学習が中心の学校です。
学校は中学校まであり、卒業後は地元の高校や「きのくに国際高等専修学校」に進学しています。
「きのくに子どもの村学園」への入学を考えている方は、教育方針には共感しているけど、進路や学力についてわからないため不安という方がいるのではないでしょうか?
「卒業生はどこに進学してるの?」
「学力は大丈夫?」
「普通の学校にいってなじめるの?」
実は「きのくに子どもの村学園」には進路指導がありません。
なぜなら、学校の基本原則のひとつに自己決定があり、
自分の進む道こそ自分で決めるもっとも大切なことだ
としているからです。
子どもたちは自分自身でよく考えて、進路を選び対策をします。(相談やアドバイス、情報提供はしてくれます)
私の息子は、小学5年生の秋から中学卒業までの約4年半「きのくに子どもの村学園 かつやま子どもの村小・中学校」で過ごしました。
この記事では、きのくに子どもの村学園を卒業した息子のその後の進路、高校受験のときのこと、よかったことや困ったことをお伝えします。
この記事を読むと、情報の少ない「きのくに子どもの村学園」の卒業生の進路の一例を知ることができます。
入学するかどうかを考えるためのヒントになると思います。
結論としては、息子は地元の県立工業高校に進学し成績上位で卒業しました。
現在は公立の医療大学に進学し、理学療法士になるための勉強をしています。
「きのくに子どもの村学園」ってどんなところ?
「きのくに子どもの村学園」はとにかく自由な学校です。
子供たちの多くが遠くから通っているため、寮に入っている子が多いです。
不登校の子や問題がある子が通う学校?と思われがちですが、そうではありません。
学園の基本方針として
自己決定の原則(子どもがいろいろなことを決めます)
個性化の原則(一人ひとりの違いや興味が大事にされます)
体験学習の原則(直接体験や実際生活が学習の中心になっています)
があります。
宿題なし、テストなし、成績表なし。
クラスは縦割りで、公立の学校では考えられないような活動がされています。
子どもたちは、のびのびと楽しそうに生活しています。
学校の詳しい情報はこちらをご覧ください。➡http://www.kinokuni.ac.jp/nc/html/htdocs/?page_id=13
「きのくに子どもの村学園」に入学するまで
どんな小学生だった?
息子がどういう小学生だったか簡単に説明したいと思います。
勉強はふつう程度にはできて、運動はどちらかというとできる方、学校で問題を起こすわけでもなく、友達とも仲良く生活していました。
ただゲームが好きで、宿題がきらいな子でした。
こういうことってあるあるですよね?
ときにはゲームする時間を制限するなどして、宿題をやらせていました。
でもそれが苦痛だったようで、本当につらそうでした。
学校の授業がきらいなわけではなく、宿題がとてもいやだったんです。
友達と遊んだりゲームをする時間をうばわれて、自由に過ごすことができないことがいやだったのかもしれません。
親の思い
そんな息子を見ていて
「子ども時代って楽しくていいはずなのに、こんなのでいいのかな?」
と思いました。
「勉強は必要だけれど、小学生がこんなにつらい思いをしてやるべきことなのかな?」
「学校で勉強はしているわけだし、小学生のうちは宿題をしなくたって大人になって困るわけではないんじゃないか?」
「今は思いっきり遊んだり楽しく過ごすべきなんじゃないか?子供が楽しくないなんてダメだ!」
と思いました。
でも公立小学校にいるかぎり、みんなと同じに出された宿題をやらなければいけない。
そこで「宿題がない学校」をさがしました。
そしてたどり着いたのが「きのくに子どもの村学園」でした。
入学するまで
「きのくに子どもの村学園」の話をしたところ、息子は興味を持ちました。
そこで夏休みを利用して福井県を旅行し、学校に立ちよって話を聞きました。
入学には筆記試験はありません。
二泊三日の体験入学の結果、入学が許可されました。
合格したら必ず入学するという約束で、体験入学をすることになっています。
でも実際に入学してみないとわからないこともあると思いました。
「いやだったら辞めてもいいからね。でもわからないから一ヵ月は頑張ってみて」
と息子にはいいました。
関東の自宅から遠く離れた福井県の学校にたったひとりで行くことを、小学校5年生でよく決心したなぁと思います。
それ以上に宿題がいやだったのですね。
「きのくに子どもの村学園」在学中の様子
「きのくに子どもの村学園」での様子
寮からは、三週間に一度帰宅します。
電話は週末しか使うことができませんでした。
転校したばかりのころは、週末になると何度も電話をかけてきました。
家族と離れ、慣れない生活に不安とさみしさがあったのだと思います。
しかし、子供は慣れるのが早いものです。
「かつやま子どもの村小・中学校」の子どもたちも、みんな優しくてよく面倒をみてくれたようです。
そのうち学校も寮で友達と過ごすことも楽しくなったようで、週末に一度も電話してこないこともありました。
学校から送られてくる手紙や写真で、息子の成長を見ることができました。
公立の学校では、授業参観以外で子供の様子をみることができないのが当たり前でした。
「きのくに子どもの村学園」では、普段の授業中の様子もたくさん写真に撮ってくれました。
息子は学校や寮生活、行事などでも、自らさまざまな役割をするようになりました。
公立の学校では積極的なタイプではなかったので、「きのくに子どもの村学園」の教育と環境によって変わったのだなぁと感じました。
親の気持ち
息子と離れて暮らすことはさみしかったです。
「ほんとうに転校させてよかったのか?」と考えることもありました。
でも、のびのび楽しそうに生活していることが嬉しかった。
公立の学校に通っていたころのようなつらそうな様子はもう見られませんでした。
中学校への内部進学も地元の高校に進学することも自分で決めました。
しかしいろいろ心配がありました。
学力の心配
小学生のときはただ「楽しんでほしい」と思い、学力のことはあまり考えませんでした。
中学生になって高校受験について考えるようになると、学力が心配になりました。
実際、高校受験は大変だったと思います。
でも、それは公立の中学校に行っていても同じであったかもしれません。
息子は公立の小学校に行っていたとき、宿題をとてもいやがっていました。
そのまま通学していても勉強がきらいになったり、不登校になっていたかもしれません。
「きのくに子どもの村学園」は公立の学校のような勉強の時間は少ないです。
でも、自分で考え行動することが身につくような授業がたくさんあります。
生きていく力は身につくのではないかと感じていました。
登下校の心配
「かつやま子どもの村小・中学校」は福井県の山奥にあります。
家は関東のため、ひとりで登下校させるのはとても心配でした。
入学したばかりは、学校まで送り迎えをして電車の乗り換えなどを教えました。
少しずつ待ち合わせ場所を自宅近くにしていき、最寄り駅への送迎だけで登下校できるようになりました。
関東から行っている子も何人もいて、だいたい同じ電車で帰ってきます。
息子の場合はとなりの市に帰ってくる一つ年上の女の子がいたので、転校したころから息子のことを気にかけてくれてありがたかったです。
それでも中学三年生になっても、無事に帰ってくるまではいつも心配はありました。
お金の心配
私立なのでお金はかかります。
学費と寮費以外に、遠方のため交通費がかなりかかりました。
入学したときは、中学も内部進学するかは決めていませんでした。
でもできる限り希望どおりにしてあげたいと思っていました。
結局4年半「きのくに子どもの村学園」で過ごしたので、かなりの出費になりました。
学費・寮費に関してくわしくは、ホームページ(よくある質問)をご覧ください。
http://www.kinokuni.ac.jp/katsuyama/qanda.html
受験について
「きのくに子どもの村学園」には進路指導がありません。
テストや成績表もありません。
受験も押し付けではなく、自分で行きたい高校を調べて、必要な勉強をします。
「子どもが自分で決める」とは言っても、それができる子とそうでない子がいると思います。
親は見守ることができればいいのですが、結局口を出してしまいますよねぇ。
最終的には息子が決めた学校を受験してもらってよかったのですが、そもそも受かる可能性がある学力なのかわかりません。
そのため帰宅したときに模試を受けたのですが「行ける高校あるかな?」と心配になるほどの点数でした。
時間配分や記入の仕方など、テストの受け方がわからなかったそうです。
やったことがないので当たり前なのですが・・・。
それが中学三年の夏頃だったので、本当に心配になりました。
それでも進路を決めて、寮でも勉強をがんばったようです。
小学生の時は楽しいだけでもよかったのですが、受験に必要な学力や経験はある程度つけてほしいというのが本音でした。
結局乗り越えることはできたのでよかったのですが・・・。
高校を推薦で受験することも考えていたのですが、評定を教えてもらうことができずに困ったということもありました。
卒業後の進路は?
地元の工業高校へ進学
無事に地元の県立工業高校に合格することができました。
この高校を選んだのは、
- 単位制で好きな授業を選択できる
- 普通科よりは工業に興味があった
- 学力のレベル
という理由だったそうです。
高校ではバスケットボール部にも所属し、成績は上位でふつうに高校生活を送りました。
中学校とは違い「テストで順位がつくのが、ゲーム感覚でおもしろい」と言っていました。
いろいろな面で新鮮だったかもしれませんね。
大学へ進学
その後は県立の医療大学に進学し、今は理学療法士になるため勉強をしています。
工業高校であったため学習内容が足りなかったり、先生にも難しいと言われていました。
しかしあきらめずに、進研ゼミやYouTubeなどで自分で勉強していました。
塾にも行きませんでした。
受験をのりこえられたのは、もしかしたら「きのくに子どもの村学園」で身についた「自分自身で決めて行動する」というのが生きたのかなぁと思いました。
まとめ
今回は「きのくに子どもの村学園 かつやま子どもの村小・中学校」に約4年半通った息子の進路と学力についてお伝えしました。
結論、息子は希望の高校、大学に進学することができました。
「きのくに子どもの村学園」での勉強では、高校受験は苦労しました。
しかし「きのくに子どもの村学園」の教育によって「自分で考え、決めて、行動する」ということが身についたのかなぁと思う場面が何度もありました。
生きていく力は確実にあると思います。
今選ぶとしても「きのくに子どもの村学園を選ぶ」と息子は言います。
二つ年下の娘は、公立学校を選びました。
その子によって合うところと合わないところがあるし、大切に思うことは違います。
私が大事にしてきたことは「子ども自身に決めさせる」ということです。
この記事が「きのくに子どもの村学園」への入学を考え悩んでいる方のヒントになればうれしいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。